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最終更新日 2006年7月24日 2月24日土曜日、三島グランドホテルで、横浜市で小児歯科開業の元開冨士雄先生を講師にお招きし、『口から覗く子どものからだとこころ』というテーマの講演会を開催しました。歯科医師だけでなく子どもの口の発達にかかわる様々な職種のかた、幼稚園や保育園、一般からの参加もあり、関心の高さが感じられました。 講演内容は、口の成長発達について生物学的、系統発生学的、心理学的、社会的な背景と、診療室での子どもたちありさまや治療経過の臨床例を示しながら解説され、臨床家ならではの説得力のあるお話でした。その内容は膨大で、限られた紙面に表すのは難しいので、印象的な部分を紹介いたします。 子どもが育つ力は生物学的に備わっているにもかかわらず、子どもの口の中に手を入れられないなど、母親の育てる能力に問題があるケースが増えている。(自分が子どもの時に愛されたことがない、だからどうしていいのかわからない親、思い通りにならないと虐待がはじまる) 子どもを育てるとは、命の継続のために自立させることであり、基本的生活習慣を獲得することで、口を育てる第一歩として「食べる」ことがすべての礎になる。私たち歯科医師は口を診ることでこれを支援してゆくことができる大切な立場にある。 哺乳の口から咀嚼の口へ。スコップ状の舌形態から舌の平坦化、側縁の厚みの減少、舌尖の形成、舌の挙上。口唇形態の変化、吸盤のような口唇から伸展性のある口唇へ。舌小帯の役割、哺乳時は舌を固定するための太くて短いから感覚情報入力しやすい薄く平坦で可動性に富む形に(小帯は、退縮性の器官である)。吸うための口から食べるためへと、機能と構造の変化がうまく進んでゆく。 様々なものを口に入れたり、舐めまわしたりする行動は、乳首しか触れたことのない口腔の過敏な状態を慣らしていくことを意味する(脱感作)。体性筋由来の舌にとっては感覚入力と運動の統合学習過程として大切な行為であることを理解して欲しい。また、生えてきたばかりの歯に対していきなり歯ブラシは不適切で、ガーゼなど刺激の弱いものからゆっくりと慣らしてゆくべきであることが理解できる。 唾液の分泌量が増えて主食に対するの分解酵素が増えてきたときが消化の場への変革、離乳の時期である。 手づかみ食べは、口唇で食物を捕らえる練習で、哺乳類のついばみ食べから食物の性状など手からの情報収集とほかの感覚が統合されてゆく。手のひら食べから指先食べに移行することで、指の微細な運動の練習にもなっている。この時期に口腔機能として重要な口唇閉鎖が獲得される。唇をうまく使えないと食べこぼしが減らない。 以下、項目を簡単に記載する。 生活リズムを確立することの大切さ:子供の寝る時間が世界一遅い すぐに疲れるこども:身体に入ってくる情報をうまく処理できず、目に頼りすぎている。外遊びが少なく、感覚―運動調整機能の獲得、5感の統合による行動発達の問題 言語障害:摂食機能はプレスピーチといわれ、うまく食べられない、口の構造に問題があるのにうまく発音できるわけがない 正常嚥下と幼児型嚥下:頤が動くかどうか 歯列形態や咬合:口唇形態や舌機能など軟組織に影響されること。食べるのが下手、発音が不明瞭など、上顎前突、過蓋咬合の機能的問題について詳しく解説された。 ブラキシズムは筋肉のフラストレーション:咬耗は邪魔なところを削り倒した結果。 下顎骨は平衡器としてはたらく:片側噛みなど全身の中では姿勢の問題と関連づけられる。 指しゃぶり:神経生理学的に解説され、口唇閉鎖が確立されていれば問題ない。 口腔とこころの発達では、触覚防御反応の過敏な状態といじめ、育てにくい子ども、スキンシップの大切さが強調された。 3時間に及ぶ長い講演時間でしたが休憩を取ることなく、元開先生の巧みなお話や、身振り手振りなど全身を使って、時には歯ブラシを使ってのパーフォォーマンスに魅了されていたようです。目前の患者さんの壊れた口を診て、どうしたらいいのかばかり考えるのではなく、さまざまな背景を洞察することで名医になれるかもしれません。 2006年7月22日 静岡県保険医協会主催、歯科衛生士 田島菜穂子さんを講師にむかえて、「歯科衛生士によるケア・・・やりがいのある医療のために・・・」司会をしてきました。講師の略暦を拝見すると卒業年度がいっしょ。自分自身にやりがいを求められないと言うか、仕事に対するモチベーションを保つだけでせいいっぱの私にくらべて、とにかく尊敬します。 主題はメンテナンス、メンテナンスとは、メンテナンスを成功させるための環境作り、身だしなみや顔の表情と言った心構え、メンテナンスを継続させるためのキーのコミュニケーション、実際の症例での観察すべきところ、起こってしまったことに対してのアプローチ、分析、患者さんの表情の観察から始まり、患者さんを取り巻く社会環境、患者さんの身体的状況、お口のケアをすることにより、心のケアにまでと、核心に迫ることができる。などなど、メンテナンスに対して真剣に取り組んでいる気持ちがよく理解できました。また、メンテナンスがいかにやりがいのある仕事か納得させられます。 一言でいうなら、"Successful Maintenance is Communication " ということでしょう。Gugino先生とまったく同じことをおしゃります。患者さんを人として注意深く観察、理解できるか、また、つきあっていけるかとということ、ただし、歯科医師として。わたしの一番苦手なことです。 講師が勤務する ナグモ歯科赤坂クリニックは、保険診療をしていません。すべて自費診療です。患者さんのレベルが違いますし患者さんの要求も高いものがあるでしょう。対する医療側は、時間的、経済的余裕を持って対応できますが、常にハイクォリティー歯科医療を提供せねばなりません。 伊豆の寺田歯科に当てはめて考えると、すべて、自費診療にしたら・・・患者さんが逃げてきます。でも、このまま現在の診療報酬ではちょっと考え物です。この先、さらに保険点数が下がるようならば、これも選択の一つじゃないかなって。 フリーター、ワーキングプア、橋の下のブルーシート族、子供に対するネグレクトなど、世の中の2極化は、思いもよらないほど早く進行しています。どうしたらいいのでしょう? 2006年7月19日 ![]() 第22回 ケースプレゼンテーション報告 第22回ケースプレゼンテーションが去る7月2日(日)に川崎グランドホテルで開催されました。当日の出席者は 名、ケース提出者は28名でした。 中尾会長の挨拶のあと、Gugino先生のSpecial Lecture “Past---Present---Future Are you positioned for the future?”がありました。3M(メカニクス、マネージメント、マーケティング)について、特にマーケティングに関しては治療時間の50%以上をコミュニケーションにあてる大切さを強調されました。また、最近の文化ともいえる健康や美への関心の中で、口元や歯がかなり上位のポジションにあり、矯正歯科の守備範囲が広範に及ぶことも示されました。最後に、「情報時代」から「コンセプト(概念)の時代」へ、という意味深い言葉で締めくくられました。年に1度のGugino先生のLectureは、私たちの診療所のUpdateには欠かせない存在であります。 昼食をはさんで症例閲覧のあと、昨年のリフレッシュセミナーから新たな形式で復活?したGugino先生、根津先生、永田先生による症例検討があり、すべてのケースについて3先生のすばらしい洞察、さまざまなコメント、アドバイスがありました。提出した先生は自分の順番になるや心もち緊張したりして、よい刺激になっていたようです。横で見学しているだけでも勉強になり、とてもスタディークラブらしい時間に思えました。 締めくくりに、難易度と治療結果に対するポイントから選ばれる優秀症例の表彰が、昨年同様に行われました。2年連続受賞の戸村博臣先生、田中康照先生、そして、難易度が高いわけではないのですが新人賞枠として私が優秀症例賞をいただきました。 表彰の盛り上がりと熱気の冷めぬなか、島田先生の閉会の挨拶、丸山先生より第24回熱海大会のアナウンス、ワンデーセミナーの案内を元開先生よりお話いただき、閉会になりました。 (BSC会報用の原稿をそのままアップしました)2006年3月12日 「トータルから口をみる」の著者 谷口威夫先生をお招きして、「失敗、問題」をキーワードに講演をお願いしました。 冒頭から、すべてが失敗症例で話しつくせない」 また、今回の保険点数改訂でかかりつけ初診が無くなることについて、「歴史的ショックだ」と、おなじ開業医の立場から共感を訴えるプロローグでした 田方歯科医師会主催の学術講演で、1年前から私が企画を担当していました。 当初は会員参画の旗印を上げて、1年かけて谷口先生に質問をぶつけようと考えていたのですが、質問は皆無で、企画倒れに終わりました。スタデーグループじゃないから無理だって! 講演は、臨床的な細かいテクニックまで披露していただき、けっこう勉強になりました。 歯科医院というものは、やはり、その歴史がものをいうなぁ、大切なことは、やはり、院長の哲学のようなものでしょうか。 僕みたいに自己中心的考えの人間にはとっても難しい・・・ここいらのことを変えるのは難しいです。でも、まあ、ストレスにならないようにぼちぼちやるかといったところでしょうか。 谷口先生の魅力、それは安心してくださいといわんばかりの笑顔かもしれません。 もしかしたらこれも、努力の賜物?スマイルトレーニングしなくっちゃ。
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